心エコー解説 ~粘液腫様変性性僧帽弁疾患を診る~ 【第2回】右側傍胸骨長軸左室流出路断面・長軸四腔断面を用いた疾患の診断

心エコー解説 ~粘液腫様変性性僧帽弁疾患を診る~ 【第2回】右側傍胸骨長軸左室流出路断面・長軸四腔断面を用いた疾患の診断

著者について

大菅 辰幸

大菅 辰幸

略歴

宮崎大学 獣医内科学研究室

2012年北海道大学獣医学部獣医学研究科卒業
2015年北海道大学大学院獣医学研究科獣医学専攻
   (博士課程)修了 博士(獣医学)
2013-15年 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2016年 日本学術振興会特別研究員(PD)
2016-17年 北海道大学大学院獣医学研究院
     客員研究員
2016-17年 北海道大学人獣共通感染症
     リサーチセンター 学術研究員
2017-20年 北海道大学大学院獣医学研究院
      附属動物病院 特任助教
2020年~ 宮崎大学農学部獣医学科
     獣医内科学研究室 助教

はじめに

前回は健康な犬を用いて右側傍胸骨長軸左室流出路断面および長軸四腔断面の描出方法を紹介しました。皆様がこれらの断面を少しでもキレイに描出できるようになっていると嬉しいです。

今回は「心エコー図検査により粘液腫様変性性僧帽弁疾患(Myxomatous mitral valve disease:MMVD)を診断する」ことを目標として、MMVDの犬の右側傍胸骨長軸左室流出路断面および長軸四腔断面の典型画像を紹介していきます。

MMVDの診断の概要

心エコー図検査によるMMVDの診断は、①Bモードにおいて僧帽弁の弁尖の肥厚、弁尖の逸脱(prolapse)、あるいはその両方が認められることと②カラードプラモードにおいて僧帽弁逆流が認められることを基に行います。

Bモード

動画1 左室流出路断面 Bモード

健康な犬においては僧帽弁が全長にわたり同じ太さであるのに対し、MMVDの犬においては僧帽弁の弁尖が肥厚し棍棒状を呈します。ただし、大型犬においては弁尖の肥厚は軽度であるか認められない場合が多いです。
また、僧帽弁の弁尖が収縮期に大動脈弁の付け根と僧帽弁後尖の付け根を結ぶ直線を越えるように湾曲していれば「僧帽弁の逸脱がある」と判断します。
Ao:大動脈、LA:左心房、LV:左心室

動画2 長軸四腔断面 Bモード

健康な犬においては僧帽弁が全長にわたり同じ太さであるのに対し、MMVDの犬においては僧帽弁の弁尖が肥厚し棍棒状を呈します。ただし、大型犬においては弁尖の肥厚は軽度であるか認められない場合が多いです。
また、僧帽弁の弁尖が収縮期に僧帽弁前尖と後尖の付け根を結ぶ直線を越えるように湾曲していれば「僧帽弁の逸脱がある」と判断します。
LA:左心房、LV:左心室

カラードプラモード

動画3 左室流出路断面 カラー

僧帽弁逆流による左心室から左心房へ向かうモザイク状(赤色、青色、黄色、緑色:機器による)のシグナルが収縮期に認められます。健康な犬においては同様のモザイク状のシグナルは認められていません。
Ao:大動脈、LA:左心房、LV:左心室

動画4 長軸四腔断面 カラー

僧帽弁逆流による左心室から左心房へ向かうモザイク状のシグナルが収縮期に認められます。健康な犬においては同様のモザイク状のシグナルは認められていません。
LA:左心房、LV:左心室

トラブルシューティング:左心房がキレイに見えない場合(長軸四腔断面)

動画5 トラブルシューティング:左心房がキレイに見えない場合(長軸四腔断面)

長軸四腔断面を描出する際、左心房や僧帽弁が適切に描出されていない場合、①プローブを背側方向へ少し移動させるか、プローブの根元が上昇する方向へプローブを少し倒すか、あるいはその両方を行う、あるいは逆に②プローブを腹側方向へ少し移動させるか、プローブの根元が下降する方向へプローブを少し立てるか、あるいはその両方を行う、ことにより左心房や僧帽弁を描出することができます。

あとがき

今回は、MMVDの犬の右側傍胸骨長軸左室流出路断面と長軸四腔断面の心エコー画像を用いてMMVDをどのように診断するかを紹介しました。これでMMVDの診断ができるようになるはずです(そもそも典型的な心雑音の時点で診断がついているかもしれませんが)。

次回は、MMVDの診断を越えて、右側傍胸骨長軸左室流出路断面と長軸四腔断面を用いてMMVDの重症度をどのように把握するかについて紹介しようと思います。



                                 動画作成協力 森 啓太
                            宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科