学術情報

この原稿を執筆している2023年4月中旬の日本は、新型コロナウイルス感染症の第8波が収まりきらないまま第9波を迎えるのか、それとも収束に向かうのか、まさに正念場を迎えています。米国の感染者はオミクロン株のXBB.1.5が9割を超え、日本でも増えつつあります。そのような状況の中、マスクの着用は任意となりました。また、5月のゴールデンウイーク明けには、感染症法の2類相当から5類へ移行することが決まっています。新型コロナウイルス感染症の行方はまだわかりません。

猫伝染性腹膜炎（FIP）は、猫コロナウイルス（FCoV）に起因する進行性で致死的な全身性炎症性疾患である。FCoVは、一本鎖(+)RNAウイルスであり、エンベロープ表面に王冠に似た突起があり、ラテン語の王冠を意味する「コロナ（corona）」が由来になっている。生体外の乾燥した環境下では約2か月間生存できるが、アルコールや次亜塩素酸ソーダの噴霧や拭き取りによって不活化できる。

貧血は再生性貧血と非再生性貧血の2つに大別され、その原因疾患は様々である。 犬の代表的な再生性貧血の原因疾患として特発性免疫介在性溶血性貧血（IMHA）が挙げられる。実際に特発性IMHAが疑われて当院を紹介受診する症例も多いが、特発性IMHA以外の疾患が原因疾患として特定されることも少なくない。本稿では、異なる原因で溶血性貧血を呈した犬について、実際に行った診断アプローチやその後の経過を含めてご紹介し、溶血性貧血に対する診断アプローチとして重要なポイントやピットフォールについて説明する。

シーズー、去勢雄、9歳1か月 病歴：2か月前に膀胱結石摘出手術（多数の小型の結石）を当初のホームドクターで実施されたが、その12日後には再度膀胱内に結石が確認された。その時、両腎臓結石、右尿管結石、右腎盂拡張（水腎）も指摘された。尿管結石は5年前に知人から譲渡された時から認められていた。

政府は新型コロナウイルス感染症を2023年5月8日に感染症法の2類から5類に移行することを決定しました。これにより医療は様々な対応を迫られることになります。約3年間におよぶ人類と新型コロナウイルスの闘いはまだ終止符を打たれていませんが、5類への格下げは新型コロナウイルスへの関心を薄くしています。「天災は忘れたころにやってくる」という誰でも知っている言葉がありますが、新型コロナウイルスの新たな変異株はそんな気の緩みを狙ってくるかもしれません。今回は2023年2月の時点で、新型コロナウイルスやその陰に隠れた重要な感染症について語っていきます。

犬糸状虫症は、予防薬の普及と飼育形態の変化、また環境衛生レベルの向上等によりその発生は減少傾向にあり、小動物臨床において最も予防が普及・浸透した感染症の1つと言えます。しかし、感染源が消滅したわけではなく、軽視できない重要な感染症であることには変わりありません。ミルベマイシン オキシムなどの犬糸状虫症予防薬は、適切に投与すれば確実な予防が可能な優れた薬剤です。その優れた効果を発揮させるためには文字通り「適切に投与する」必要があり、投薬期間と確実な投薬を遵守することが重要なポイントになります。

本症例は、東京大学附属動物医療センター（以下:当院）受診約6ヵ月前より、水様性下痢と低アルブミン血症が認められており、紹介医でプレドニゾロンでの治療を一時的に実施していたが部分的な良化は認められるものの完全な改善は得られず軟便が間欠的に持続していた。 また２ヵ月前より、落ち着かない様子がある、苦しそうにする、後肢が震えるなどの臨床徴候が観察されるようになり、当院の来院前日と当日に強直性痙攣を疑う症状が認められた。

レトロウイルスは、１本鎖RNAを有し逆転写酵素によりDNAを合成する。そして、インテグラーゼにより宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれると、プロウイルスの状態となる。生体外では非常に不安定であり、室温下では数分から数時間以内に自然に失活する。猫におけるこのウイルスの感染経路としては、唾液などの分泌物からの水平感染、そして感染母体から胎仔への経胎盤・子宮感染や分娩時および哺育中の垂直感染などがある。水平感染では感染猫との同居による濃厚接触や咬傷、食事や飲水用の容器、そしてトイレの共用などが多いため、多頭飼育環境では特に注意が必要である。

今回は新型コロナウイルスの猫への感染についての最新情報をお届けします。この稿を執筆している2022年11月下旬は外国人観光客が増えて各地が賑わい、サッカーのワールドカップが始まり、日本も活気を取り戻してきたかのようです。その一方で、第7波がおさまりきらないうちに感染者が増加していき第8波に突入しています。今年はインフルエンザの流行も確実視されています。例年のインフルエンザの報告数のピークは1月上旬です。新型コロナウイルス感染症とインフルエンザのピークが重なりそうな気配があり心配です。このコラムで再三お伝えしているように、ヒトの感染者数が増加すると犬や猫の感染数も増加します。

インターフェロン製剤は医学では30年以上前からウイルス感染症や腫瘍など様々な症例に対し使用され、獣医学においても使用開始から20年以上が経過しています。その間、種々の疾患に使用されてきましたが、経験に基づく使用が多く、実際の使用経験が少ない先生方にとっては、作用メカニズムやエビデンスに関する情報の不足を感じられていると思われます。 そこで、インターフェロンの作用メカニズムをはじめとする基本的な知識に加え、様々な情報をご提供できるよう、本連載を企画しました。本企画が先生方の日常診療の一助となれば幸いです。（編集部）