犬のクッシング症候群の診断 〜第5回 低用量デキサメタゾン抑制試験①〜

犬のクッシング症候群の診断 〜第5回 低用量デキサメタゾン抑制試験①〜

学術情報

犬のクッシング症候群の診断 〜第5回 低用量デキサメタゾン抑制試験①〜

著者について

永田 矩之(岐阜大学)

永田 矩之(岐阜大学)

略歴

2010年 湯木どうぶつ病院勤務
2016年 北海道大学大学院獣医学研究科附属動物病院 臨床研修獣医師
2016年 北海道大学大学院獣医学研究科博士課程
2018年 日本学術振興会特別研究員
2020年 北海道大学大学院獣医学研究院附属動物病院 特任助教
2023年 岐阜大学応用生物科学部獣医臨床放射線学研究室 准教授

はじめに

今回は、犬のクッシング症候群の診断において最も信頼性が高いと考えられている低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)について紹介します。第1回でも記載したとおり、クッシング症候群の診断に関する最近のガイドラインでは、尿中コルチゾール/クレアチニン比(UCCR)、ACTH刺激試験、およびLDDSTの3つの検査の中で、LDDSTを最も推奨しています(Bugbee, et al. 2023)。このガイドラインでは、LDDSTの利点として、クッシング症候群の診断における感度が高いこと、および下垂体性と副腎性を鑑別できる可能性があることをあげていますが、重要なのはLDDSTが「グルココルチコイドフィードバックに対する視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の感受性低下」を証明する検査であるということです。クッシング症候群の診断における内分泌検査の役割は、「コルチゾールの産生増加」と「グルココルチコイドフィードバックに対するHPA軸の感受性低下」を証明することですが、後者を評価できるのは基本的にLDDSTを含むデキサメタゾン抑制試験だけです。
「グルココルチコイドフィードバックに対するHPA軸の感受性低下」を証明するとはどういうことなのか、それがクッシング症候群の診断においてなぜ重要なのかについて考えていきたいと思います。