犬猫のうんちコラム [第16回] 腸内環境をつくる見えない支配者 ~バクテリオファージ~

犬猫のうんちコラム [第16回] 腸内環境をつくる見えない支配者 ~バクテリオファージ~

著者について

大森 啓太郎(東京農工大学)

大森 啓太郎(東京農工大学)

略歴

2007年10月-2012年3月 東京農工大学大学院共生科学技術研究院 助教
2012年4月-2020年5月 東京農工大学大学院農学研究院 講師
2019年 アジア獣医内科学専門医(内科)
2020年6月 東京農工大学大学院農学研究院 准教授
2024年8月 東京農工大学小金井動物救急医療センター 教授

はじめに

これまで本コラムでは、糞便微生物叢移植(FMT)についてご紹介してきました。欧米においては、ヒトのClostridioides difficile感染症に対するFMTは、腸内細菌叢を標的とした治療法として広く認知されています。健常個体の糞便を移植することで、乱れた腸内環境を再構築し、病態を改善させる、この一見シンプルな治療戦略は、腸内細菌叢研究の象徴とも言える存在であり、これまでの「細菌中心の医療」を大きく前進させました。
話しは変わりますが、私の研究室では、ジャーナルクラブという、学術論文を紹介するゼミを週に1回開催しています(どこの研究室でもそうだと思いますが)。そのジャーナルクラブで大学院生が、「無菌化されたFMTでC. difficile感染症の消化器症状が改善した」というかなり衝撃的な論文を紹介してくれました(図1)。