犬糸状虫症は、予防薬の普及と飼育形態の変化、また環境衛生レベルの向上等によりその発生は減少傾向にあり、小動物臨床において最も予防が普及・浸透した感染症の1つと言えます。しかし、感染源が消滅したわけではなく、軽視できない重要な感染症であることには変わりありません。ミルベマイシン オキシムなどの犬糸状虫症予防薬は、適切に投与すれば確実な予防が可能な優れた薬剤です。その優れた効果を発揮させるためには文字通り「適切に投与する」必要があり、投薬期間と確実な投薬を遵守することが重要なポイントになります。
犬糸状虫症予防薬の投薬期間は、「蚊の発生後1ヵ月から蚊の発生終息1ヵ月後までの間」とされており、この投薬期間の目安についてはHDU※という概念が利用されております。このHDUを用いることで、感染開始日・終了日を数値化することができ、投薬遵守のための飼い主へのインフォームドコンセントにも利用することができます。
共立製薬では例年、各地気象台発表の気温データを用いHDUを算出し犬糸状虫感染期間を試算しております。今年も2024年の犬糸状虫感染期間と近年(2002~2023年)の犬糸状虫感染開始・終了の最早日と最遅日の期間を比較・検討しましたのでここにご紹介いたします。

気象庁による2024年の天気概況をみると、3月~5月は暖かい空気に覆われやすかったため、平均気温は北・西日本でかなり高く、特に、南から暖かい空気が流れ込みやすかった4月には、北・東日本では1946年の統計開始以降で4月として1位の記録的な高温となりました。また、9月~11月は北日本では寒気の影響を受ける時期があったものの、おおむね秋を通じて全国的に暖かい空気に覆われやすかったため、秋の平均気温は全国的にかなり高く、全国153の気象台等のうち120地点で、秋の平均気温が歴代1位の高温となりました。
それに伴い、犬糸状虫感染期間をみると、全国的に過去の記録よりも早い時期から感染開始日となっている傾向が認められました。感染終了日についても全国的に最も遅い感染終了日を記録しており、年間の感染期間が最大14日ほど増加した地域も確認されました (図1)。
このように犬糸状虫感染期間は、天候概況、温暖化や異常気象の影響から感染開始日・終了日ともに大きく変動し、過去の動向から正確な感染期間を予測することは困難です。従って、犬糸状虫症予防薬の投薬開始日・終了日は、余裕を持って設定する必要があり、そうすることで、適正な投与・効果的な予防につながるものと考えられます。
それに伴い、犬糸状虫感染期間をみると、全国的に過去の記録よりも早い時期から感染開始日となっている傾向が認められました。感染終了日についても全国的に最も遅い感染終了日を記録しており、年間の感染期間が最大14日ほど増加した地域も確認されました (図1)。
このように犬糸状虫感染期間は、天候概況、温暖化や異常気象の影響から感染開始日・終了日ともに大きく変動し、過去の動向から正確な感染期間を予測することは困難です。従って、犬糸状虫症予防薬の投薬開始日・終了日は、余裕を持って設定する必要があり、そうすることで、適正な投与・効果的な予防につながるものと考えられます。

図1 HDUを用いた各地における2024年の犬糸状虫感染開始日・終了日および近年(2002~2023年)の犬糸状虫感染開始・終了の最早日と最遅日期間(共立製薬調べ)
※ここに示されている犬糸状虫感染期間は各都市定点の気温を基にして算出されたものであり、あくまでも参考値としてご利用ください。
ミルべガード錠

共立製薬株式会社:ミルベガード錠製品情報
https://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/products/detail/product_20066.html
https://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/products/detail/product_20066.html
来院されるペットオーナー様向けの注意喚起にご利用いただけるツールをご用意しております。
院内ポスターや配布用のチラシとしてご活用ください。
下記のページからダウンロードいただけます。
【最新版】HDUを用いた近年の犬糸状虫感染期間 院内用ポスター