SAC NAVI 大学病院紹介 麻布大学附属動物病院

SAC NAVI 大学病院紹介 麻布大学附属動物病院

著者について

峰重 隆幸(麻布大学)

峰重 隆幸(麻布大学)

略歴

2008年 鳥取大学農学部獣医学科 卒業
2010年 麻布大学附属動物病院 全科研修獣医師
2015年 日本学術振興会 特別研究員(DC2)
2016年 麻布大学大学院 獣医学研究科獣医学専攻 博士課程修了、博士(獣医学)
2024年 麻布大学 獣医学部獣医学科臨床診断学研究室 講師、附属動物病院病理診断科 病理診断医、広報委員(現職)

はじめに

麻布大学附属動物病院は、創設者が掲げた「臨床の麻布」の精神を受け継ぎ、診療だけでなく教育・研究にも大きく貢献してきた大学病院です。伴侶動物診療部門産業動物診療部門、そして両領域を支える診療サポート部門の3部門が連携し、年間約2万件の症例に対応しています。
2024年には、最先端の設備を備えた新病院棟「動物医療センター」が竣工し、診療体制が一層充実しました(写真1)。現在、教員や研修獣医師など約130名のスタッフが、質の高い獣医療の提供に努めています。
本記事では、小動物臨床医向けメディアであるSAC NAVIの読者にも、本院の特徴の1つである幅広い臨床体制への理解を深めていただくために、産業動物診療部門についても簡単にご紹介いたします。
写真1:2024年に竣工した麻布大学附属動物医療センタ...

写真1:2024年に竣工した麻布大学附属動物医療センター(新病院棟)の外観

伴侶動物診療部門

動物医療センター(新病院棟)について:

麻布大学附属獣医臨床センターは地上6階・地下1階の構造を有する病院棟で、そのうち1-4階を動物医療センターと呼び、診療から検査・入院、教育までを一貫して行える設計となっています。

5F:実習室(学生教育用)
4F:洗浄・滅菌室、実習室(学生教育用)
3F:血液・病理検査室、カンファレンスルーム
2F:犬猫別の入院室、ICU、研修獣医師室、愛玩動物看護師室、電気生理・視覚検査室、宿直室
 ⇒ 犬と猫それぞれ専用の入院室、重症動物用ICUを備え、快適かつ安全な入院環境を整えています。
1F:受付・待合室、猫専用待合室、応接室、11室の診察室、2つの処置ゾーン(それぞれに多目的室を備える)、X線室、内視鏡検査室、手術室、陽圧手術室、医局、薬局
 ⇒ 今回の改修では、1Fをメインに大幅な刷新が行われ、受付・待合室や診察室、手術室の更新により、来院者の安心感と診療チームの作業効率が向上しました(写真2)。陽圧手術室には陽圧空調システムを導入し、無菌的な術野環境を確保しています。
B1F:MRI室、CT室、放射線治療室、感染症例室、剖検室
写真2:動物医療センター1F フロアマップ

写真2:動物医療センター1F フロアマップ

専門診療科:

画像診断科、眼科、循環器・呼吸器科、腫瘍科(放射線治療)、軟部組織外科・腫瘍外科、整形外科、内科、神経科、総合診療科、CT/MRI科、栄養科、病理診断科の12の専門診療科を設置しています。これらの診療科には、米国獣医内科学会(ACVIM)、アジア獣医内科学会(AiCVIM)、アジア獣医外科学会(AiCVS)、米国獣医病理学会(ACVP, 臨床病理)、日本小動物外科専門医(JCVS)など、国内外の専門医資格を有する獣医師が在籍しています。国内外の学会が認定する専門医・認定医は10名以上在籍しており、幅広い分野で高度かつ専門的な診療が可能です。低侵襲カテーテル治療や独自の僧帽弁形成術(写真3)など、最先端の医療を提供しています。
写真3:1.6kgの小型犬に対して実施された体外循環下...

写真3:1.6kgの小型犬に対して実施された体外循環下での僧帽弁形成術の術中写真(執刀:循環器・呼吸器科 青木卓磨准教授)

また、MRI・CTを含む高度画像診断装置、X線、超音波診断、内視鏡、腹腔鏡、放射線治療装置(リニアック)などの設備を院内に備えています。各専門診療科が密に連携し、難症例に対しても迅速に診断・治療計画を立案できる体制を整えています。

他院で対応が難しい重篤症例にも積極的に取り組んでおり、手術困難と判断されたケースでも一度ご相談いただければと思います。また、各診療科の診療日はホームページを参照してください。

レジデント制度:

当院では、アジア獣医内科学会認定の神経科・循環器科や、日本小動物外科専門医制度に準拠したレジデントコースを設け、専門医取得を目指す若手獣医師を育成しています。

特任教員Ⅱ種制度:

卒後1-5年程度の若手獣医師を対象に、伴侶動物診療を主とした特任教員Ⅱ種(全科研修獣医師)制度を設けています。2年間の体系的な研修プログラムと年間40回以上の院内セミナーを通じ、診療・教育の両面で実践力を磨きます。

筆者(峰重)も卒業後3年目から全科研修獣医師として当院に勤務し、充実した研修を受けました。現在は専門を病理に変えましたが、当時の経験は現在の病理診断業務の基盤となっています。

研修修了後の主なキャリア例:
 ・当院での特任教員I種など上位職への移行
 ・他大学での臨床教員採用
 ・海外レジデントや大学院進学(例:コロラド州立大学、テキサスA&M大学)
 ・動物病院開業、専門病院、一般病院への就職
当院で研修を経た多くの獣医師が、国内外の第一線で活躍しています。

産業動物診療部門

キャンパス内に併設された産業動物臨床教育センター(LAVEC)は、産業動物(主に牛・豚など)の診療と教育のための2階建て施設で、全国から症例を受け入れています。
LAVEC紹介動画(YouTube)

防疫管理のもと、油圧式手術台や天井クレーン、ガントリー径90cmの産業動物専用CT(写真4)、内視鏡などの高度な設備を備え、整形外科手術や高度画像診断にも対応可能です。さらに、2022年に新設されたフリーバーン牛舎は、牛が自由に移動できる構造や十分な床面積、暑熱対策設備、搾乳機器、Wi-Fi環境などを備えた先進的な飼養施設で、動物福祉にも配慮されています。

LAVECは学生の実習教育にも活用されており、学内にいながら酪農地域に匹敵する実践環境のもとでスキルを習得できます。実際の診療を通じた教育効果は高く、将来の産業動物獣医師の育成に寄与しています。
写真4:産業動物臨床教育センター(LAVEC)の外観(...

写真4:産業動物臨床教育センター(LAVEC)の外観(左)と牛のCT撮影の様子(右)

診療サポート部門

診療サポート部門は、検査、病理、薬局、受付、滅菌、看護など6つの専門部署から構成され、日々の診療を多面的に支えています。

また、病理検査、細胞診、画像検査(CTやX線読影など)については、学外の動物病院や研究機関からの検体受託も行っており、全国の臨床獣医療を支える大学附属施設としての役割を担っています。病理検査や細胞診のご依頼も随時受け付けておりますので、ご活用いただけますと幸いです。

まとめ

麻布大学附属動物病院は、伴侶動物から産業動物まで幅広い領域で先進的な獣医療を提供しつつ、それらの現場を教育に活かすことで次世代の獣医師育成にも貢献しています。また、診療科同士の連携によるチーム医療を通じ、飼い主様と動物の立場に立った動物にやさしい医療の提供を使命としています。最先端設備を備えた動物医療センターとLAVECという2つの拠点を軸に、地域の獣医療を支え、動物医療の進展と人材育成に今後も貢献してまいります。難症例や高度医療が必要な症例はぜひご相談ください。

参考リンク一覧

・麻布大学附属動物病院(トップページ)|https://avth.azabu-u.ac.jp/
・獣医臨床センターのご案内|https://avth.azabu-u.ac.jp/facility/center/
・獣医師紹介|https://avth.azabu-u.ac.jp/service/staff.html
・診療日情報|https://avth.azabu-u.ac.jp/service/schedule.html
・採用情報について|https://avth.azabu-u.ac.jp/recruit/
・LAVEC紹介動画(YouTube)|https://www.youtube.com/watch?v=siVZgXkm_7Y
・受託検査サービス|https://avth.azabu-u.ac.jp/supportform.html