犬のクッシング症候群の診断 〜第6回 低用量デキサメタゾン抑制試験②〜

犬のクッシング症候群の診断 〜第6回 低用量デキサメタゾン抑制試験②〜

学術情報

犬のクッシング症候群の診断 〜第6回 低用量デキサメタゾン抑制試験②〜

著者について

永田 矩之(岐阜大学)

永田 矩之(岐阜大学)

略歴

2010年 湯木どうぶつ病院勤務
2016年 北海道大学大学院獣医学研究科附属動物病院 臨床研修獣医師
2016年 北海道大学大学院獣医学研究科博士課程
2018年 日本学術振興会特別研究員
2020年 北海道大学大学院獣医学研究院附属動物病院 特任助教
2023年 岐阜大学応用生物科学部獣医臨床放射線学研究室 准教授

はじめに

今回は、犬のクッシング症候群の診断における低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)について、実際に検査を行う際の注意点などについて記載します。本連載で何度も繰り返しているとおり、LDDSTは犬のクッシング症候群の診断において理にかなった検査であり、世界中で利用されています。しかし、日本では以前より敬遠される傾向にあり、その理由としては、「方法が煩雑」、「結果の解釈が複雑」、そして「特異度が低いという認識」などが考えられます。たしかに、検査に8時間かかるためACTH刺激試験などと比較して簡便な検査とは言えませんが、第4回でも記載したようにクッシング症候群の診断を急がなければならない場面は多くありません。一度診断されると基本的に生涯にわたる治療が必要となる疾患であり、必要な検査を適切に選択し、確実な診断を行うことのほうが重要と考えられ、8時間かけてでもLDDSTを実施すべき状況は多々あると思います。また、検査結果の解釈もたしかに複雑ですが、第5回で記載したようにパターンをきちんと認識することで結果の解釈は比較的容易になります。一方で、カットオフ値をどのように考えるべきかについては少し難しい問題です。特異度が低いという認識については、たしかにその通りなのかもしれませんが、これはLDDSTに限ったことではありません。どの検査も診断精度は100%ではないため、偽陽性になる可能性は常に存在します。